日ごとに読む

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5月3日

ジョナサン・ハーカーの日記(速記による記述)五月三日、ビストリッツ五月一日の午後八時三十五分にミュンヘンを発ち、翌早朝にウィーンに着いた。本来ならば六時四十六分に着くはずだった列車だったが、一時間遅れて到着した。列車から...
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5月4日

ジョナサン・ハーカーの日記五月四日伯爵から手紙を受けた宿の主人が、僕のために馬車の一番いい席を確保するように命じられているとわかった。しかし詳細を尋ねるとやや消極的な様子で、僕のドイツ語が理解できないふりをした。この時点...
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5月5日

ジョナサン・ハーカーの日記五月五日、城にて早朝の暗い時間が過ぎ、太陽が遠くの地平線上に高く昇りはじめた。地平線はギザギザとして見えた──遠近感が無くなるほど遠いので、それが木々のせいか丘のせいかはわからない。眠くないし、...
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5月7日

ジョナサン・ハーカーの日記五月七日またもや早朝に書いているが、この二十四時間ゆっくりくつろいで過ごせた。遅くまで寝て、自分の意志で目を覚ました。着替えてから、夕食をとった部屋に行くと、冷たい朝食が並べられており、暖炉の上...
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5月8日

ジョナサン・ハーカーの日記五月八日この日記が冗長になりすぎていることが心配だった。しかし今は、最初から詳細に書いておいてよかったと感じる。この城と城内のすべてに、何か奇妙なものを感じ、不安で仕方がない。この場所の外にいら...
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5月9日

手紙 ミナ・マレー嬢からルーシー・ウェステンラ嬢宛 五月九日親愛なるルーシー手紙が遅れたことを許してね、仕事に追われていて。助教師の生活は大変。あなたと一緒に海辺で自由に語り合い、二人の空想の城を築くことを切望しているの...
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5月12日

ジョナサン・ハーカーの日記五月十二日まずは事実から書きはじめよう──書籍や数字で検証された、疑いようのない、素朴な事実から。《事実》を、僕自身の観察や記憶に頼らざるを得ない《体験》と混同してはならない。昨日の夕方、伯爵は...
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5月15日

ジョナサン・ハーカーの日記五月十五日再度、伯爵がそのトカゲのやり方で出て行くのを見た。彼は斜め下に数百フィート、そしてかなり左へ移動した。彼はどこかの穴か窓の中に消えていった。彼の頭が消えたとき、もっと見ようと身を乗り出...
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5月16日

ジョナサン・ハーカーの日記その後 五月十六日、朝神よ、僕の正気を守りたまえ。僕は苦境に陥っているのだから。安全も、安全への確信も、過去のものだ。僕がここに生きている間に唯一望むことは、僕自身が狂わないことだ。もしまだ狂っ...
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5月17日

手紙 ルーシー・ウェステンラからミナ・マレー宛チャタム街十七番地、水曜日親愛なるミナへあなたは私を文通相手として良く評価してないようね。でも私は最後に会ってから二通手紙を書いたけど、あなたは前回の手紙が二通目だったのよ。...
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5月18日

ジョナサン・ハーカーの日記五月十八日もう一度、日の光に照らされたあの部屋を見に行った。真実を知りかったのだ。階段の一番上にある戸口まで行くと扉が閉まっていた。その扉は、木の枠の一部が割れるほど強引に枠に押しつけられていた...
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5月19日

ジョナサン・ハーカーの日記五月十九日僕は明らかに苦境に陥っている。昨夜、伯爵はとても丁寧な調子で僕に三通の手紙を書くよう頼んだ。一通目の内容は城での仕事がほとんど終わったので数日のうちに家路につくこと、二通目は手紙の日付...
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5月24日

手紙 ルーシー・ウェステンラからミナ・マレー宛 五月二十四日親愛なるミナへありがとう、ありがとう、そしてまたありがとう! あなたの優しい手紙に感謝するわ。あなたに伝えることができて、そしてあなたの共感を得られて、本当によ...
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5月25日

スワード博士の日記(蝋管蓄音機による記録)五月二十五日今日は食欲がない。食べられず、休めないので、代わりに日記を記録してる。昨日の拒絶以来、僕は一種の虚無感を抱いている。行うに値するほど重要なことなど、世の中に何もないよ...
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5月26日

電報 アーサー・ホルムウッドからクインシー・P・モリス宛 五月二十六日イツデモ サンカ スル。フタリノ ミミガ イタクナル ハナシガ アル。アート
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5月28日

ジョナサン・ハーカーの日記五月二十八日逃げ出す機会ができた。それか、家に連絡を入れる機会が。ティガニーの一団が城にやってきて中庭で野営している。このティガニーというのはジプシー【訳注:移動型民族を指す。社会的スティグマと...
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5月31日

ジョナサン・ハーカーの日記五月三十一日今朝、目が覚めたとき、機をうかがって手紙を書くために鞄から紙と封筒を出してポケットに入れておこうと思っていた。しかし、またしても驚き! またしても衝撃!紙がすべてなくなっていた。それ...
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6月5日

スワード博士の日記六月五日レンフィールドという人物を理解すればするほど、彼の症例は面白くなってくる。利己主義、秘密主義、目的意識など、ある種の資質が非常に発達している。彼の目的意識が目的とするものを解明したいものだ。自分...
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6月17日

ジョナサン・ハーカーの日記六月十七日今朝、ベッドの端に座って頭を悩ませていると、鞭の音と共に、中庭の向こうの岩の多い道を駆け上がってくる馬の足音が、外から聞こえた。喜び勇んで窓際に駆け寄ると、八頭の頑丈な馬に引かれた二台...
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6月18日

スワード博士の日記六月十八日彼は今、クモに心を奪われていて、箱の中にとても大きなクモを数匹飼っている。飼っているハエをクモたちに与え続けており、ハエの数は明らかに減少している。しかし、より多くのハエを外から自室に誘き寄せ...
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6月24日

ジョナサン・ハーカーの日記六月二十四日、夜明け前昨夜、伯爵は僕を残して、自室に閉じこもった。僕はすぐに螺旋階段を駆け上がり、南に開いた窓から外を眺めた。何やらありそうなので伯爵を見張ることにしたのだ。ティガニーたちは城の...
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6月25日

ジョナサン・ハーカーの日記六月二十五日、朝人は夜の苦しみを味わうまで、朝がどれほど甘美で、どれほど心や目に愛おしいものかを知らないものだ。今朝、高く上がった太陽が僕の窓の向かいにある大きな門の上部を照らしたとき、日の光に...
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6月29日

ジョナサン・ハーカーの日記六月二十九日今日は最後の手紙の日だ。伯爵は手紙が本物だと証明するための手段を取ったらしく、再び僕の服を着てトカゲのように壁を下りて行くのを見た。銃か何か強力な武器があれば彼を倒せるのにと思った。...
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6月30日

ジョナサン・ハーカーの日記六月三十日、朝この日記を書くのは最後になるかもしれない。夜明け前まで眠り続け、目が覚めと共に膝をついて祈った。死神が訪れたときに、僕が覚悟できていることを見せてやろうと思ったからだ。そしてついに...
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7月1日

スワード博士の日記七月一日クモはハエと同じくらい厄介な存在になりつつある。今日、クモを処分するように指示した。彼がとても悲しげな顔をしたので、ともかくも何匹かは片付けなければならないと言った。彼は快くこれを承諾したので、...
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7月8日

スワード博士の日記七月八日彼の狂気には秩序がある、そして僕の脳内にあった着想は、徐々に形をなしつつある。それはすぐに完成した思想となるだろう。無意識的な脳作用よ、そのときあなたは意識的な脳作用という兄に道を譲らざるを得な...
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7月18日

デメテル号航海記 ヴァルナ発ウィトビー着 不思議なことが起こるので、上陸するまで正確に記録しておこう。記述日七月十八日。七月六日この日は、珪砂や土の入った箱など、積荷の搬入を終えた。正午に出航。東風強し。船員五人、航海士...
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7月19日

スワード博士の日記七月十九日進展している。僕の友人は今、スズメの群れをまるごと飼っていて、ハエやクモはほとんど消滅している。僕が家に入ると、彼は駆け寄ってきて、僕に大きなお願いがあると言った、とても、とても大きなお願いだ...
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7月20日

スワード博士の日記七月二十日世話人が見回る前のとても早い時間にレンフィールドを訪ねた。彼は起き上がり、鼻歌を歌っていた。彼は取っておいた砂糖を窓際に広げており、明らかにまた蝿取りを始めているようだった。しかも元気に、嬉し...
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7月22日

デメテル号航海記 ヴァルナ発ウィトビー着 七月二十二日この三日間、荒れた天候で、総員帆走に忙殺され、怯えている暇なし。みな恐怖を忘れているよう。航海士はまた陽気になり、皆仲良くやっている。悪天候の中で働く男たちを褒め称え...
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7月24日

ミナ・マレーの日記七月二十四日、ウィトビーにてルーシーが駅で出迎えてくれたが、以前にも増して可愛らしく、愛らしくなっていた。私たちは、クレセントにある彼女たちの住む家まで車で向かった。クレセントはとても素敵なところだ。小...