5月17日

手紙 ルーシー・ウェステンラからミナ・マレー宛

チャタム街十七番地、水曜日

親愛なるミナへ

あなたは私を文通相手として良く評価してないようね。でも私は最後に会ってから二通手紙を書いたけど、あなたは前回の手紙が二通目だったのよ。その上、あなたに伝えることが何もないの。あなたが興味を持つようなことは何も。今の時期のこの町はとても過ごしやすくて、私たちはよく美術館に行ったり、公園を散歩したり、乗馬したりしているわ。あなたの言う背の高い巻き毛の男性って、直近のコンサート【訳注:Pop。大衆向けコンサートのこと。】で私と一緒にいた人のことね。どうやら誰かが噂したようね。ホルムウッドさんというお名前なの。よく私たちに会いに来てくれて、お母様ととても仲がいいの。きっと共通の話題で盛り上がれるからね。先日、もしあなたがジョナサンと婚約前だったとしたら、あなたにぴったりだっただろう男性に会ったわ。ハンサムで裕福で良い家柄の、素晴らしい結婚相手候補よ。お医者様で、すごく賢いの。想像してみて! まだ二十九歳なのに、大規模な精神病院をすべて管理しているの。ホルムウッドさんの紹介で家にいらしてから、よく会いにお越しになるの。彼は、私が知る中でも随一で毅然としていて冷静な人物ね。まったく平静に見えるわ。患者にも信頼されているのでしょうね。彼には、まるで人の考えを読み取ろうとするかのように、人の顔をまっすぐ見る不思議な癖があるの。彼は私に対してもそれを試したけれど、彼には私は手強い相手ね。鏡で私の顔を見ればよくわかるわ。あなたは自分の顔を読もうとしたことがあるかしら。私はあるけれど、悪くない研究だし、したことがない人には想像もつかないほど難しいと断言できるわね。彼は私のことを心理学的に興味深い研究対象だと言っているけれど、私も同感。ご存知のように、私は流行のファッションを説明できるほど服装に関心を持っていないしね。服にはウンザリ【訳注:bore】だもの。また俗語を使っちゃった、気にしないでね。アーサーが毎日使う言葉なの。ほら、これで全部。ミナ、私たちは幼い頃からお互いの秘密をすべて話してきたわ。一緒に眠り、一緒に食べ、一緒に笑い、一緒に泣いてきた。そして今、私は近況を伝えたけれど、もっと伝えたいと思っているの。ミナ、気づかない? 私、彼を愛しているの。書きながら赤面してるわ。彼は私を愛していると思うのだけれど、言葉ではそう言ってくれないの。でも、ミナ、彼を愛してる、愛してる、愛してるの! ああ、スッキリした。昔みたいにあなたと一緒に肌着になって暖炉のそばに座って、私の気持ちを伝えられたらと思うわ。あなたに対してでも、どうやってこのことを書いていいかわからない。このままでは手紙を書くのを止めるか、手紙を破いてしまいそうで怖い。あなたに全てを伝えたいので書き止めたくないの。早く返信をちょうだい、そして思うこと全て伝えてね。ミナ、ここで筆を置くわ。おやすみなさい。私の幸せを願ってちょうだい。

ルーシー 

追伸──この手紙が秘密だって、伝えるまでもないわよね。おやすみなさい。L

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