10月27日

スワード博士の日記

十月二十七日、正午

とても奇妙なことに、僕たちが待っている船の知らせはまだない。ハーカー夫人は昨夜と今朝、いつものように《打ち寄せる波とほとばしる水》を報告したが、《波は非常にかすかだ》と付け加えている。ロンドンからの電報も変わらず《ゾクホウ ナシ》だ。ヴァン・ヘルシングはひどく不安げで、ついさきほども、伯爵を逃がしてしまったのではと心配している旨を語っていた。そして、こうも付け加えた。

「ミナ奥様のあの無気力さが好きではない。魂と記憶は、トランス状態の時に奇妙なことをしでかすものだ」

僕はもっと聞こうとしたが、ちょうどその時ハーカーがやってきたので、ヴァン・ヘルシングは手を上げて言葉を止めるよう注意を促した。今夜の日没、催眠状態の彼女に更に充分に話をさせなければ。

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