ジョナサン・ハーカーの日記
十月四日、朝
夜中にもう一度、ミナによって起こされた。今回は二人ともよく眠れた。夜明けの灰色の光が窓を鋭い長方形に照らし出し、ガスの炎は光の円盤というよりむしろ斑点のようになっていた。彼女は急くように僕に言った。
「行って、教授を呼んで。すぐにでも教授に会いたいの」
「どうしてだい」僕は尋ねた。
「思いついたの。きっと夜中に思いついて、知らないうちに熟成されたのね。夜明け前に催眠術をかけられたら、話せるんだって。あなた、早くして。時間が迫ってる」
僕は扉に向かった。スワード博士がマットレスの上で休んでおり、僕を見て急いで立ち上がった。
「どうかしましたか」彼は心配そうに聞いた。
「いいえ」と僕は答えた。「でも、ミナがすぐにヴァン・ヘルシング博士に会いたがっているんです」
「呼んでくる」と彼は言い、教授の部屋へ急いだ。
二、三分後、ヴァン・ヘルシングがガウンを着て部屋に入り、モリス氏とゴダルミング卿はスワード博士と一緒に扉の前にいて質問していた。ミナの笑顔を見て、教授は表情から不安を消し、手を擦りながら言った。
「親愛なるミナ奥様、見違えるようだ。ほら! ジョナサン君、我々は今日、昔のようなミナ奥様を取り戻したんだ!」
そして、彼女の方を向いて、明るくこう言った。
「それで、私はどうすればいいのかな。この時間帯に呼んだんだから、必要ないことはないだろう」
「私に催眠術をかけてほしいんです!」彼女は言った。「夜明け前にお願いします、そうすれば自由に話せると思うからです。早くしてください、時間がありません」
彼は何も言わず、彼女にベッドに座るように指示した。
そして、ミナの頭の上から下に向かって、両手を交互に動かしながら、ミナを見つめた。ミナは数分間、じっと彼を見つめていた。その間、僕は何かの危機が迫っているように感じ、心臓はトリップ・ハンマーのように鼓動した。だんだん彼女の目が閉じてきて、じっと座って動かなくなった。胸元がゆるやかに動いていたので生きていると分かった。教授はさらに数回手を往復させた後に止めた。彼の額には大きな汗の玉が浮かんでいた。ミナは目を開けたが、同じ女性とは思えなかった。ミナの目は遠くを見ているようで、声も悲しげに茫然としており、僕には覚えのないものだった。手を上げて沈黙を強いたのち、教授は僕に他の人たちを連れてくるよう合図した。彼らはつま先立ちで部屋に入り、扉を閉めると、ベッドの足元側に立って様子をうかがった。ミナは彼らを見ていないようだった。その静寂を破ったのは、彼女の思考の流れを断ち切らないように低い調子で話す、ヴァン・ヘルシングの声だった。
「どこにいるんだね」
その答えは曖昧なものだった。
「わかりません。眠りは自らの場所と呼べるものを持ちませんから」
数分の間、沈黙が続いた。ミナは固まったように座り、教授もじっと彼女を見つめている。他の人たちはほとんど息をする勇気もない。部屋が明るくなってきた。ヴァン・ヘルシング博士はミナの顔から目を離すことなく、僕にブラインドを上げるように指示した。ブラインドを上げると、朝がすぐそこまで来ているように思えた。赤い光が放たれ、バラ色の日差しが部屋の中に拡散していくようだった。その途端、教授が再び口を開いた。
「今、どこにいるのかね」
その答えは、夢うつつながらも意志があり、まるで彼女が何かを解釈しているかのようだった。速記を音読するときに同じ調子で話しているのを聞いたことがある。
「わからない。すべてが奇妙なんです!」
「何か見えるのかね」
「何も見えません、真っ暗です」
「何か聞こえるかね」
僕は教授の忍耐強い声に緊張を感じることができた。
「水がひたつく音が聞こえます。沸き立つようで、さざ波が立っています。外から聞こえます」
「では、君は船に乗っているのかな」
僕たちは皆、互いに顔を見合わせ、それぞれの表情から何か手がかりを得ようとした。考えるのが怖かったのだ。答えはすぐに出た。
「そうね、その通りです!」
「他に何か聞こえるかな」
「頭上で男たちが走り回る足音。鎖のきしむ音と、鎖が軋む音と、キャプスタンの爪がラチェットに引っかかるときの大きな音がします」
「何をしてるのかね」
「私はじっとしています──ええ、とてもじっとしています。死んでいるみたいに!」
その声は、眠っているような深い呼吸に消えていき、開いていた目は再び閉じられた。
このときには太陽は昇っており、僕たちは皆、陽光の中にいた。ヴァン・ヘルシング博士がミナの肩に手を置き、その頭を枕にそっと寝かせた。彼女はしばらく子供のように寝ていたが、長い息をついて目を覚まし、周りの僕たちを不思議そうに見つめた。
「私、寝言してたかしら」
彼女はそうとだけ言った。しかし、彼女は伝えられるまでもなく状況を把握しており、自分が何を話したのか知りたがった。教授が会話を繰り返すと、彼女は言った。
「それなら一刻の猶予もありません。まだ手遅れではないかも!」
モリス氏とゴダルミング卿は扉に向かい始めたが、教授の穏やかな声が彼らを呼び戻した。
「友よ、ここにいてくれ。この船は、それがどこにいるかは分からねども、彼女が話している間に錨を降ろしていた。今、大きなロンドン港には多くの船が停泊している。君たちが探しているのはどれかね。手がかりを再び得られたことを神に感謝するが、手掛かりがどこへ導いてくれるかはわからない。我々はいささか盲目であった。人並みに盲目であった。人は、それを予見するには後からわかったことを事前に知っている必要があるにもかかわらず、後から振り返ってみて初めて、あの時予見できたのにと思うものなのだ! 伯爵の言葉は意味不明だったと思わないかね。ジョナサンの強烈なナイフの危険に晒されることを恐れながらも、伯爵があの金を奪取した理由を、今知ることができる。彼は逃亡しようとしていたのだ。聞いてくれ、逃亡だ! 彼は土の箱が一つしか残っていないことと、そしてキツネを追う犬のように彼を追う男たちの一団とから、このロンドンに居場所がないことを理解した。彼は最後の箱を持って船に乗り込み、この地を去ったのだ。彼は逃げようと思っているが、そうはさせん! 我々が後を追う。アーサー君が赤いフロックに身を包んだ時に言うように表現すると、《タリホー!【訳注:狩りで獲物が見つかった際の、伝統的な掛け声】》だな。我らが老狐は、とても狡猾だ! なので我々も狡猾に追わなければならない。私も狡猾なので、しばらくすれば彼の考えを理解するだろう。それまでの間に、我々は安らかに休める。我々の間には、彼が渡ろうとしない海があり、渡ろうと思ったとしても渡れない海がある。──船が陸に触れるか、満潮か干潮のときは別だが。ほら、ちょうど太陽が昇ってきたところだ。一日中、日没までが我々の出番となる。風呂に入り、外出着を着て、必要な朝食をとろう。彼が同じ土地にいないのだから、快適に食べられるだろう」
ミナは訴えかけるように彼を見つめながら、こう尋ねた。
「でも、どうしてこれ以上彼を捜す必要があるのでしょうか。彼は私たちの前からいなくなってしまったというのに」
彼はミナの手を取り、それを軽くはたいてこう言った。
「まだ何も尋ねるときではない。朝食を食べたら、質問に答えよう」
彼がもう何も言わないので、僕たちは服を着替えるために解散した。
朝食の後、ミナは再び質問をした。彼は深刻そうな顔で一分ほど彼女を見つめ、悲しげに言った。
「親愛なるミナ奥様、今こそ我々は彼を見つけなければならないのだ。たとえ地獄の淵まで追いかけなければならないとしても!」
彼女は青ざめながら、小声で尋ねた。
「どうしてかしら」
「なぜなら」彼は厳粛に答えた。「彼は何世紀も生きられるが、あなたは死すべき女性に過ぎない。時間の問題となったのだよ──彼があなたの喉に傷をつけてからね」
彼女が気を失って倒れたとき、僕は寸前で受け止めるのに間に合った。
スワード博士の蝋管蓄音機日記、ヴァン・ヘルシングによる語り
ジョナサン・ハーカーへ
君の愛するミナ奥様のところにいなさい。我々は調査に出かける──これを調査と呼べるならばだが。調査の前に知っており、我々はただ確認するだけだからだ。しかし、君は今日一日ここにおり、彼女の世話をしなさい。これは君の最高の、そして最も神聖な仕事だ。今日一日、彼はここに現れない。我々四人がすでに知っていることを、君にも知ってもらうために、話しておこう。我々の敵である彼は立ち去った。彼はトランシルヴァニアの城への帰路にあるのだ。まるで大きな炎の手が壁に書いたかのように、明らかなことだ。彼は逃亡のために何らかの準備をし、最後の土の箱はどこかへ出荷する準備ができていた。だから彼は金を取ったのだし、だから彼は最後に目見えた時に急いでおったのだ。日が暮れる前に捕まらないようにしたのだ。これは彼の最後の希望だった。他の望みとしては、彼が同類と考えている哀れなルーシー嬢が、彼を墓に匿ってくれることだ。しかし、それには時間がなかった。それが失敗したので、彼は彼の最後の土塁にまっすぐ向かったのだ。多義語だね【訳注:Earth-workで、防衛のための土塁と土の箱で意味をかけている】。彼は賢い、とても賢い! ここでの勝負が潰えたことを知って、家に帰ることにしたのだ。来たときの航路を取る船を見つけ、それに乗ったのだ。我々は今から、どの船でどこまで行くのか調べに出かける。それが分かったら戻って来てお話ししよう。そうすれば、君や哀れなミナ奥様を新たな希望で慰められるだろう。すべて失われたのでないという事実は、熟慮すれば希望となるだろう。我々が追い求めるこの怪物は、ロンドンまでたどり着くのに何百年もかかったのに、我々が始末方法を知った途端、一日で追い出してしまったのだ。彼には限界があるものの、多くの害を与える力があるし、我々のように苦しむこともない。しかしながら、我々は各自の目的のためにこそ強くなるし、共にいればより強力となるのだ。ミナ奥様の親愛なる夫よ、心機一転しなさい。この戦いは始まったばかりであり、最後には我々が勝つだろう──神が高きに座してその子らを見守っておられるのだから、これは確かなことだ。だから我々が戻ってくるまで、安心して過ごしなさい。
ヴァン・ヘルシング
ジョナサン・ハーカーの日記
十月四日
ヴァン・ヘルシングのメッセージを蓄音機で聴かせると、哀れなミナはずいぶん明るくなった。伯爵がこの国から出たという確信が、すでに彼女に慰めを与えているのだ。慰めは彼女の強さに繋がっている。僕自身、彼の恐ろしい脅威が目前にない今、存在を信じることさえほとんど不可能に思われる。ドラキュラ城での恐ろしい経験も、遠い昔の夢のようだ。秋のさわやかな空気の中、明るい日差しの中──
ああ、どうして存在を疑えようか! 考えているうちに、僕の目は哀れな愛しい人の白い額にある赤い痕に釘付けになった。この痕が残っている間は、疑うことはできない。この痕を見た後は、記憶が疑念を晴らしてくれるだろう。ミナも僕もくつろぐのが怖くて、何度も何度も日記を読み返した。読み返すたびに、状況はどんどんひどく思えるのに、なぜか苦しみや恐れはどんどん小さくなる。何か、導かれるような使命感が文書全体に表れていて、それが心地よいのだ。ミナは、僕たちは究極の善を体現するための道具なのかもしれない、と言っている。そうかもしれない! 僕も彼女のように考えてみよう。僕たちはまだ一度も先のことを話してない。調査を終えた教授たちに会うまで、待った方がいいだろう。
一日がこれほど早く過ぎる日が、再び訪れるとは思わなかった。もう三時だ。