8月12日

ミナ・マレーの日記

八月十二日

私の予想は間違っていた。夜中に二度、ルーシーが外に出ようとしたので目を覚ましたのだ。寝ていても、扉が閉まっていることに少し焦っているようで、抗議するような感じでベッドに戻っていった。夜明けとともに目が覚めると、窓の外から鳥のさえずりが聞こえてきた。ルーシーも目を覚まし、前日よりもさらに元気になっていたのが嬉しかった。以前のような陽気さが戻ってきたようで、私の横に寄り添ってきてアーサーのことを全部話してくれた。私は、ジョナサンについてどれほど心配しているかを話し、彼女は私を慰めようとした。どうやら効果はあったようだ。同情は事実を変えられないが、事実を耐える助けにはなる。

手紙 聖ヨセフ&聖マリア病院(ブダペスト)のシスター・アガサよりウィルヘルミナ・マレー嬢宛

八月十二日

奥様へ

ジョナサン・ハーカー氏の意向により代筆を執ります。聖ヨセフ、聖マリアの加護もあり経過は良好ですが、筆を執るには充分な体力がないためです。彼は激しい脳熱のために、六週間近くも私どもの治療を受けています。彼はあなたへの愛を伝えることを私に望み、同封のエクセターのピーター・ホーキンス氏宛の手紙では、彼の仕事がすべて完了したことと、遅延を申し訳なく思っていることを、彼の心からの敬意を込めて伝えることを望んでいます。彼は丘の間にある私どもの療養所にて二、三週間の休養が必要ですが、その後帰国できるでしょう。彼は、自分は充分なお金を持っていないこと、しかし他に必要とする人が援助に困ることはないように滞在費を払いたいことを、あなたに伝えてほしがっています。

信じていただけることを願いつつ

親愛と祈りを込めて

シスター・アガサ

追伸:患者が眠っているので、あなたにもっと知らせるため追記します。彼はあなたのことを話してくれました。もうすぐ彼の妻になるそうですね。ご両名に祝福を! 彼は恐ろしい衝撃に見舞われ──医師によるとですが──その譫言は恐ろしいものでした。オオカミ、毒、血、幽霊、悪魔、そして口にするのも恐ろしい物たち。今後長い間、この類の話で興奮させないように、常に注意してください。彼のような病気の後遺症は、軽く消えるものではありません。もっと前に手紙を書くべきでしたが、私たちは彼の友人について何も知らず、それが把握できるものは何も身につけていなかったのです。彼はクラウゼンブルクから列車でやってきて、帰りの切符をくれと叫んで駅に駆け込んできたと、車掌が駅長から聞いたそうです。その乱暴な態度から英国人だとわかったので、汽車で行ける範囲で英国方面の一番遠い駅までの切符を渡したそうです。

ここでは充分に彼の面倒をみていますのでご安心ください。彼は思いやりと優しさがあるので、皆の心を掴んでいます。彼は本当によくなってきており、数週間もすればすっかり良くなると確信しています。しかし、念のために彼には注意してください。ご両名が末永く幸せにお過ごしになることを、神と聖ヨゼフと聖マリアにお祈りします。

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