9月9日

スワード博士の日記

九月九日

ヒリンガムに着いたとき、僕はかなり疲れていた。この二日間、ほとんど一睡もできず、脳が疲労困憊しているような感覚を覚えはじめていた。ルーシーは元気に起きていた。彼女は僕と握手した時、僕の顔を鋭く見て言った。

「今日は寝ずの番はダメ。すごくお疲れのご様子だわ。私はまたすごく元気になったの。ほんとうよ。私があなたの寝ずの番をするべきね」

僕は反論しようとはせず、晩餐をとった。ルーシーが一緒に来てくれたので、僕は彼女の魅力的な存在感によって活気づき、素晴らしい食事を食べ、さらに素晴らしいポートワインを二杯ほど飲んだ。それからルーシーは僕を二階に連れて行き、心地よく暖炉が燃える、ルーシーの部屋の隣室に案内してくれた。

「ほら」と彼女は言った。「ここにお泊まりになって。この扉と私の扉を開けたままにしておくわ。ソファに横になってちょうだい。地平線上に患者がいる間は、あなたたちお医者様は誰もベッドに入ろうとは思わないでしょうから。何か欲しいものがあれば呼びますから、すぐに来てちょうだいね」

僕は承諾せざるを得なかった。なぜなら、僕はへとへとに疲れており、起きていようとしても体を起こしてられなかったからだろうからだ。そこで、何かあったら呼ぶようにとの約束を改めて取り付け、僕はソファに横たわり、意識を手放した。

ルーシー・ウェステンラの日記

九月九日

今夜はとても幸せな気分。ひどく弱っていた後に、考えたり動いたりできるようになるのは、鈍色の空から吹きつける長い東風のあとに、日の光を感じるようなものね。なぜか、アーサーをとても近くにいるように感じる。彼のぬくもりを感じている気がするの。病気や衰弱は自分勝手なもので、意識や同情を自分自身だけに向けさせる。でも、健康や強靭さは、愛に自由を与えてくれて、思考や感情において愛がそこかしこに現れるようになるのね。私自身の想いのありかは知っているわ。アーサーもこれを知っていたらいいのに! 私の耳が起きていて疼くように、あなたの耳も眠りながら疼くのかしら。ああ、昨夜の睡眠は幸せだった! ご親切なスワード博士に見守られながら眠るわ。そして今夜は、彼がすぐそばにいるので、眠るのが怖くない。私に良くしてくれるみんなに感謝します! 神様、ありがとうございます! おやすみなさい、アーサー。

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