ミナ・マレーの日記
八月十九日
嬉しい、嬉しい、嬉しい! 嬉しいばかりではないが、それでも嬉しい。ついにジョナサンの知らせがあった。彼は病気になっていて、そのため手紙を出せなかったのだ。そう知った今となっては、病気のことを考えたり、言ったりすることも怖くない。ホーキンスさんは私に手紙を転送し、とても親切にも一筆書き添えてくれた。私は朝ここを出発して、ジョナサンのもとへ行き、必要なら看病を手伝い、家に連れて帰るつもりだ。ホーキンスさんは、私たちが向こうで結婚するのも悪くないと言う。胸元に仕舞ったシスターの手紙が湿っているのを肌で感じられるほど、手紙を持って泣き通しだった。ジョナサンからの手紙なので、私の心の近くになければならない。彼は私の心の中にいるのだもの。旅の計画は完了し、荷物は準備済みだ。着替えを一着だけ持っていく。ルーシーが私のトランクをロンドンに持っていき、私が使いをよこすまで預かってくれるだろう。だって、もしかしたら──。これ以上日記を書かず、夫であるジョナサンに言うために取っておかなければならない。彼が見て触れたこの手紙は、私たちが会うまで私を慰めてくれるに違いない。
スワード博士の日記
八月十九日
昨夜、レンフィールドは奇妙な変化を遂げた。八時ごろから興奮しはじめ、けしかけられた犬のように鼻を鳴らしはじめた。世話人は彼の行動に驚き、僕が彼に関心を持っていることを知っていたため、レンフィールドに何か話すよう促した。レンフィールドは日ごろ世話人に敬意を払い、時には卑屈ですらあるが、その夜の彼はかなり高慢で、口を利こうとさえしなかったそうだ。彼が言うのはせいぜいこういったことだった。
「お前とは話したくない、お前はもうどうでもいい、ご主人様はもう目前にあられる」
突然の宗教的狂気に襲われたのだろうと世話人は考えている。もしそうなら、一波乱に気をつけねばならない。殺人狂と宗教狂を併発した力の強い者は危険だろうから。この組み合わせは恐ろしいものだ。九時、僕は彼を訪ねた。僕に対する態度は世話人に対するものと同じで、彼の高慢な自己感情の中では、僕と世話人の違いは彼にとって無きに等しいと思われた。宗教狂のようだし、やがて自分自身が神であると考えるようになるだろう。人間と人間との間のこのような小さな区別は、全能の存在にとってはあまりにも些細なことなのだ。このような狂人たちは、すぐに正体を露わにする! 本物の神はスズメの一羽が落ちるのも気にかけるが、人間の虚栄心から創られた神は、鷲とスズメの違いにも見向きもしない。ああ、人々がこれを知ってさえいれば!
三十分以上にわたり、レンフィールドはますます興奮し続けた。僕は見ているそぶりは見せなかったが、厳重に観察していた。その時、彼の目に、狂人が何かを思いついた時に必ず見せる鋭い眼光と、精神病院の世話人達がよく知っている、頭と背中の揺らぐような動きが現れた。彼はすっかり静かになり、諦めたようにベッドの端に座り、うつろな目で宙を眺めていた。僕は、彼の無関心が本当なのか、それとも単にそう見えるだけなのかを見極めようと思い、今まで彼の注意を惹かなかったことのない話題であるペットの話に誘導した。最初は何も答えなかったが、やがて苛立たしげに言った。
「あいつらなんてクソ喰らえだ! あんなの、もうどうでもいいんだ」
「なんだって」と僕は言った。「まさかクモがどうでもいいって言うのか」
(目下、クモは彼の趣味であり、手帳は小さな数字の列で埋め尽くされているのだ。)これに対して彼は謎めいた答えを返した。
「花嫁の付き添いの乙女たちは、花嫁の到来を待つ人々の目を喜ばせるが、花嫁が近づくと人々の目は満たされ、もはや乙女たちは輝かない」
彼はその言葉を説明しようとせず、僕が彼と一緒にいる間中、頑なにベッドの上に座ったままだった。
今夜の僕は疲れていて元気がない。ルーシーがプロポーズを承諾すればどうなっていたかを考えずにはいられない。すぐに寝られないのなら、現代のモルペウスことクロラールの出番だ──C{2}HCl{3}O.H{2}O! 摂取が癖にならないように気をつけないと。いいや、今夜は飲まないこととする! ルーシーのことを考えていたのだから、薬とルーシーをごたまぜにして彼女の名誉を汚す気はない。必要とあらば、今夜は眠れぬ夜となるだろう。
その後。
薬を飲まない決意をして良かったし、それを守ってもっと良かった。僕が寝そべっていて、時計が二回鳴るのを聞いたとき、夜間警備員が病室からやってきて、レンフィールドが逃げ出した旨を報告した。僕は服を着てすぐに駆け下りた。僕の患者は徘徊するには危険すぎる人物だ。見ず知らずの人に対して、彼の思想は害を及ぼすかもしれない。世話人は僕を待っていた。彼は、ここ十分以内に、ベッドで眠っているようなレンフィールドを扉の観察用窓から見たのだ、と言った。窓をこじ開ける音で注意を引かれたのだという。走ってレンフィールドの部屋に戻り、レンフィールドの足が窓から消えるのを見て、すぐさま僕を呼び寄せたそうだ。レンフィールドは寝巻きを着ていただけなので遠くには行けないはずだ。世話人は、扉から建物の外に出るときにレンフィールドを見失うかもしれないので、後を追うよりここから行く先を見ていた方が得策と考えたのだ。その世話人は体格のいい男で、窓を通り抜けることができなかった。僕は痩せていたので、彼に助けられながら窓から足を先に出し、地上二、三フィートだったので無傷で着地した。世話人によると、患者は左に一直線に走ったらしいので、僕はできるだけ早く走った。木立の間を抜けると、荒れ果てた家とうちの敷地を隔てる高い塀に白い人影がよじ登っているのが見えた。
僕はすぐに戻り、患者が危険かもしれないので、ただちに三、四人の部下を連れてきて、カーファックスの敷地内までついてくるよう警備員に指示した。僕は自分で梯子を取ってきて、塀を越えて反対側に降りた。レンフィールドの姿が家の角の向こうに消えていくのが見えたので、僕は彼の後を追いかけた。家の裏手で彼が、礼拝堂の、古い鉄で裏打ちされたオーク材の扉のすぐそばにいるのを見つけた。彼は誰かと話しているようだったが、彼が何を言っているのか聞くために近づくのが怖かった。彼が僕に怖がって逃げるかもしれないからだ。蜂の群れを追いかけるのだって、逃げ出す衝動に駆られている裸の狂人を追いかけるのに比べれば、たいしたことではない! しかし二、三分後、彼が周りの何も気にしないことが分かったので、思い切って彼に近づいた。僕の部下が塀を越えて彼に近づいてきていたため、更に近づいた。僕は彼がこう言うのを聞いた。
「私はあなたの命令を実行するためにここにいます、ご主人様。私はあなたの奴隷です。あなたは私の忠誠に報いてくださいますでしょう。私は長い間、遠くからあなたを拝んでまいりました。今、あなたが近くにいるのですから、命令をお待ちします。親愛なる主人よ、褒美を分配するときに、まさか私を見過ごしませんでしょうね」
わがままな年寄りの乞食だ。彼は臨在を信じている時でさえも、パンと魚のことを考えるのだ。彼の狂気は驚くべき結果を編み出す。僕たちが彼に迫ると、彼は虎のように闘った。彼は非常に強く、人間というより野生の獣のようだった。こんな怒りの発作を起こした狂人は見たことがないし、二度と見たくない。彼の強さと危険を事前に察知していたのは不幸中の幸いであった。彼のような強さと熱意があれば、檻に入る前に荒々しいことをしていたかもしれない。とまれ、彼はもう安全だ。ジャック・シェパードであっても、この拘束服から自由になることができないだろうし、その上に緩衝材入りの部屋で壁に鎖でつながれているのだ。彼の叫び声は時にひどく、しかしその後に続く沈黙はさらに恐ろしい。彼のすべての身じろぎが殺意を意味しているからだ。
今、やっと彼は初めて理解できる言葉を話した。
「私は我慢します、ご主人様。来ている──来ている──来ている!」
そこを区切りとして、部屋に戻ったのだった。興奮して眠れそうになかったが、この日記をつけて落ち着いたので、今夜は少し眠れそうだ。