デメテル号航海記 ヴァルナ発ウィトビー着
八月四日
まだ霧があり、朝日も届かない。私は船乗りだから日の出があることは知っているが、そうでなければ気づけないだろう。下に行く勇気はなく、舵を離れる勇気もなかった。だから一晩中ここにいたのだが、夜の薄暗がりの中で見たのだ──《彼》を! 神よ、次のように考える私をお許しください。航海士が船外に飛び出したのは正しかった。男らしく死ぬ方がよかった。青い水の中で船乗りらしく死ぬのに、誰も異議を唱えることはできない。しかし、私は船長であり、船を離れるわけにはいかない。この悪魔、この怪物を阻止する。私の力が衰えはじめたら、私の手を舵に縛り付け、彼──あれ──が触れないものも一緒に縛りつける。そうすれば、良い風が吹いても悪い風が吹いても、自分の魂と、船長としての名誉を守れる。衰弱しつつあるし、夜が近づいている。再び彼と会うことがあったとしても、行動する隙がないかもしれない。難破しても、この瓶が見つかれば、見つけた人は理解できるかもしれない。難破しなければ、すべての人が、私が自分の勤めに忠実であったことを知るだろう。神よ、聖母よ、聖人たちよ、自分の責務を果たそうとする哀れで無知な魂をお助けください。